Special Interview

「風雅の表現者たち」
~ 私流ELEGANCE ~

〈vol.6〉MAHOさん
(フレグランスアドバイザー)

上質な美や文化の第一線で、しなやかにエレガンスに革新に挑み続ける〈風雅の表現者たち〉。第6回目は、プライベートサロンで香りのパーソナルカウンセリングを行う、フレグランスアドバイザーのMAHOさん。香りがもたらす魅力と、香りとのエレガントな暮らし方を伺いました。

香りの魅力に気づいた
きっかけは、祖母の香水

香水との出合いは、幼稚園の頃。祖母のつけていた香水が、香りへの関心のきっかけとなりました。祖母は紙やレザーで花を作る「アートフラワー」の仕事をしていたのですが、生花ではないのに、祖母の香水でその花たちの存在感をとてもリアルに感じられることに、子どもながら気づきました。そこから香りに興味が湧き、香水をハンカチやペンケースにつけて、持ち歩いていました。

今でも、祖母が使っていた香水の香りから、ふと祖母の存在を思い出します。香りって、自分の感情をノックしてくれるだけでなく、記憶をよみがえらせてくれる力があるんですよね。

最初のターニングポイントは、大学の時。香水とともにアートに対しても関心が高く、美術系の大学に進学したのですが、そこで教授に言われた「香りもアートじゃない?」という一言です。今の私なら当たり前に気づきそうなことですが、当時はその言葉が衝撃的で「香りに関して真剣に取り組んでみたい」と思うきっかけに。ハイブランドの香水店でのアルバイトを経て、大学卒業後に別の香水ブランドに入社。一流の香りの世界に触れることができました。

経験を重ねていくうちに、もっと多くの方にさまざまな香水の存在や、またどう楽しめるのかをお伝えしたいと思うように。そこで独立を決め、今の活動につながる香りのコンサルテーションを始めました。煌びやかな香水店だと緊張してしまってうまく香りを選べない、自分に合う香りがわからないといった疑問を持っているお客様に、プライベートサロンやフレグランスイベントで香り選びのお手伝いをしています。

ブランドの垣根を超えてのコンサルテーションは珍しかったようで、メディアに取り上げていただくきっかけに。また調香師の方に師事し、香料に深く触れた経験から、サロンでの活動以外にも、美容系専門学校でのフレグランス講師や、日本フレグランス協会の設立当初よりセールススペシャリストの常任講師を担っています。

スタイルに合わせた
香り選びで、生活の質を上げる

パーソナルコンサルティングでは、販売を伴わないため、ブランドの垣根を超えて、その方が求める香りを探っていきます。友人の家に遊びに来たようにリラックスしていただきたいので、サロン内もあえて香水の陳列をせず、シンプルに。香りだけではなくお互いに幅広い話をしながら、どんな香りがマッチするのかを見つけていきます。

香りに関するお悩みで、とくに初めての方が気にされるのが「香水が周りの方々に与える影響」です。昔は、香水は高貴な方しかつけられないラグジュアリーなものでしたが、今は誰でもカジュアルに使えるようになりました。でもその分、気配りや配慮をしながら、自分自身だけでなく周囲の方に対しても香りをプラスに感じてほしい、という意識が高まっているように感じます。

そういったお悩みには、まずご自身のライフスタイルをお伺いし、その方に適した香りの活かし方をご紹介しています。ですので必ずしも香水に限らず、ハンドクリームだったり、ボディソープだったりと、その方によってアイテムはさまざま。ハンドクリームなら、男性でも手軽に使いやすいですし、デスクワークの方はキータッチで乾燥しやすくなりますので、手荒れを防ぎながらいい香りを感じられれば、心も落ち着きますよね。

嗅覚は五感の一つとして当たり前に使っているものですが、やはり香水はアートに近いと感じます。それは美術館で素晴らしい絵を見て心を揺さぶられたり、その背景を知りたいと思ったり、さりげないポストカードを飾ってリラックスできたりという感覚。自分のライフスタイルに合う香りを取り入れれば、元気にもなれるし、リフレッシュもできる。香りを通して、生活の質を高めることに役立てていただけたらうれしいな、というのが私の一番の願いですね。

大人はサイドバックに、エレガントに香らせる

大人はサイドバックに
エレガントに香らせる

フレグランスのワードローブを揃えるなら、最低3種の香りを持つことをおすすめしています。洋服と同じで、一張羅では使うタイミングに迷ってしまう。3本あれば、例えばリラックスする時の1本、仕事用に1本、そして特別な日の1本というように、スマートに使い分けることができます。

メゾンレクシアの新しく誕生したフレグランスでいうと、朝はフレッシュな気分で始めたいので「Bigaradier(ビガラディエ)」や「Essence of the Sun(エッセンス オブ ザ サン)」が爽やかでいいですね。柑橘系のジェンダーレスな香りで、職場や家での雰囲気を損なわずに、一日の始まりにふさわしいのではと思います。

私はとくに「Bigaradier」がお気に入り。タイトル「香水の樹」のイメージにあるように、南仏の海の風が吹き抜けた時のような、きらめくように清々しい感じがとても心地よいですね。

穏やかな気分になりたいとか、ちょっと疲れたなと感じた時は「Jinn’s Wind(ジンズ ウインド)」や「Verdant(ヴァーダント)」などのやさしい印象の香りを足して。デートやパーティーなど華やいだシーンには「Path to Elegance(パス トゥ エレガンス)」や「Serendipity Ray(セレンディピティ レイ)」などのフェミニンなフローラルの香りをプラスするのがおすすめです。

メゾンレクシアの香水は、質の高さも魅力。ブランドに専属のインハウスパフューマーさんがいらっしゃって、稀少な天然香料ならではの繊細な魅力が際立つ調香を紡がれている。どれも奥行きがあり、一つ一つがとても贅沢にできています。

大人の香水のたしなみ方は、手首や首筋といった露出する部分よりも、肘の内側やウエストのサイド、ショルダーラインといったサイドバックにつけるのがポイント。すれ違った後にふと香りが漂う、くらいがエレガントな香らせ方です。つける時は、スプレーが霧状に広がるように素肌から20センチほど離したところからシュッと吹きかけ、そのまま服を着ればOK。こするのはNGです。服で隠れているため、強くならず、程よく香らせることができます。

メゾンレクシアのフレグランス(全6品)もすべてオードパルファムですが、オードパルファムはパルファムよりも軽やかで、オードトワレよりも長く香りが持続します。5時間ほど持つため、朝つければお昼過ぎか夕方にリタッチすればいいので、忙しい方にも使いやすいと思います。また朝とは違う香りを楽しみたい時などは、別の場所に重ね使いすれば、香りの絶妙なマリアージュが楽しめますし、気分転換にもなりますね。

メゾンレクシアには持ち歩きに便利な10mLサイズもありますので、お気に入りの香りは、ぜひ小さいサイズも持っておくのがおすすめ。膝裏や足首など、ウエストより下の方につけると、よりさりげなく香りを感じられます。

香りは“たしなみ”。背景や自分を感じて、心を美しくする

香りは“たしなみ”
自分を知り香水の背景を感じて、
心を美しくする

香りは適度に使えば素敵ですが、やはり使いすぎるとエレガンスからは外れてしまいます。香りには“たしなみ”があります。エレガンスに近づくための“たしなみ”として、香水を上手に使うには、まず自分を取り巻く世界でのなりたい姿を追求し、自他との間で生まれる心地よい考え方や行動を知ることが大切です。

そして香水のタイトルやデザインに込められた、ブランドやパフューマーさんのメッセージを感じること。香りはもちろんのこと、込められた思いや背景までイメージすることで感受性が磨かれ、より美しい心とたしなみが培われていくでしょう。

私は幼い頃、絵本を読むように香りを感じていました。フレグランスの香りのイメージで、1つの場面やストーリーを思い描くんです。そんなふうに、嗅覚からイマジネーションや感情を豊かにすることで、少しでも多くの方の心の糧につながるといいなと思っています。私にとって、香りは“心の美容液”。これからもご縁を大切にしながら、香りを通して心の栄養を感じていただけるよう、香りを楽しんでいただく活動を続けていきたいです。

2024.04.19

MAHO

フレグランスアドバイザー
メディアやイベント、セミナーなどを通じて香りの楽しみ方や魅力を発信。主宰のプライベートサロンではパーソナルカウンセリングを行い、クロスブランドでの香水スタイリングのパイオニア。日本フレグランス協会では、設立時より常任講師としてフレグランスセールスペシャリストの育成にも尽力。日本調香技術普及協会理事。

https://private-toilette.com/

OTHER INTERVIEW