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吉岡 容子 先生
マスク生活の常習化で、着用による肌トラブルが急増。そのひとつがニキビです。実際に1年中マスクが必要だった2020年以降、ニキビで皮膚科を受診する人が増えました。 今回は、これから汗をかく季節に向かう上で知っておきたい、マスクニキビの対処法についてご紹介します。
目次
吉岡 容子 先生
10代~40代といった若い世代で、マスクによるニキビの悩みで皮膚科を受診される方が増えています。50代や60代の方も、マスクが皮膚に触れることでの接触性皮膚炎など、肌荒れを起こしている人が多く、ニキビになっている方もいます。
マスク生活が始まってからニキビ患者は年間を通して増加傾向にありますが、これからの皮脂が多くなる時期は特に注意が必要です。
マスクを着けていることでニキビができやすくなる大きな理由は、通気性の悪さにあります。人間は常時呼吸をしていますが、口の中には口腔内に常在菌が存在しており、息を吐くことで口の中の菌がマスクに付着します。マスクの中は湿気がこもりやすく、菌が繁殖しやすいため、皮膚の上にいるアクネ菌と一緒になり、ニキビを作ることになります。
皮脂が過剰に出ている場合は、さらに毛穴の詰まりも起こすので、よりニキビができやすくなってしまいます。
どうしてもマスク生活が長引きそうな昨今。ニキビにならないためのマスクの使い方や、ご自宅でできるスキンケア方法を理解しておきましょう。
ニキビは菌によりできるものなので、ニキビにならないためには肌を清潔に保つことが大切です。
最低でも毎日マスクは交換し、前日使用したものをそのまま使うことのないようにしてください。布マスクも毎日洗濯しましょう。
可能であれば、午前と午後で交換するなど、1日に複数回リフレッシュさせるのが理想です。特に1日中マスクを着けて過ごさなければならない人は、できるだけこまめに交換して清潔さを保つよう心がけましょう。
ニキビ予防の観点から言うと、マスクの種類は布製をおすすめします。綿やシルク、ポリウレタンのものでも良いでしょう。
不織布のマスクはウイルスや飛沫対策としては防御力が高いのですが、それだけ通気性は悪くなっています。マスクの中が湿気やすく、菌がつきっぱなしのマスクがずっと肌に触れたままという状態にもなります。
人混みに行く場合や、職場や学校などで不織布マスクの使用が義務付けられている場合は仕方がないですが、それ以外の場所では布製のマスクをする方が肌にはやさしいです。
ニキビを防ぐには、シーンによってマスクの種類を使い分けるようにしましょう。
肌表面の環境を整えることも、ニキビ予防で大事なポイントです。
最近は、乾燥がニキビの原因になると思って保湿に力を入れている人も多いのですが、過剰な保湿により毛穴のつまりを起こし、ニキビ肌になっているケースも増えています。特に、健康な肌の人が、アトピー性皮膚炎の方のための保湿医薬品を使用して、ニキビを作ってしまっていることもありました。自分の肌の状態に合った保湿を心がけましょう。
皮脂の落としすぎはよくありませんが、肌あれを気にしすぎて高保湿に走るのではなく、油分と水分のバランスがとれた適度な環境を作ってあげることが大切です。
清潔でさっぱりとした肌環境を作るためには、洗顔も欠かせません。
肌に付着した皮脂や菌は、水やお湯だけでは洗い流せないので、必ず朝晩2回、洗顔料を使ってきちんと顔を洗うようにしましょう。
また、古くなった角質を剥離させるピーリングもニキビケアには効果的です。表面の肥厚した角質層をはがすことで毛穴がきれいになり、健康でうるおいを保持する力がある層が正常なターンオーバーにより表面に上がってきて、皮脂のコントロールができるようになります。
週に1~2回はこうしたケアを取り入れてみるのも良いでしょう。
偏った食生活も、ニキビを作る原因になってしまいます。特にスナック菓子やインスタント食品などには、皮脂として出やすい食品添加物や加工物が多く含まれているので、避けましょう。また、サプリメントに頼るよりも、できるだけ毎日の食事でバランス良く栄養を摂取できるよう心がけてください。
皮脂のコントロールにはビタミンB群が効果的です。野菜だけでは摂れる量が少ないので、豚肉、うなぎ、納豆などもあわせて食べるのがおすすめです。イソフラボンが含まれる大豆製品には、ホルモンバランスを整え毛穴を縮小する効果があります。納豆や豆腐なども積極的に摂ると良いでしょう。
体の代謝を上げることで、皮膚のターンオーバーが促されますので、代謝がアップするような食事も意識してみてください。
ニキビができてしまったときは、その部位を安静にすることが大切です。気になって触ったり刺激を与えたりすると、症状が悪化し、痕が残る危険性もありますので注意しましょう。
素早く治し、繰り返さないために適切なケアが必要です。
ニキビができた箇所は清潔にし、お肌の環境を整えなくてはなりません。しっかりと洗顔をして、化粧水などで水分を与え、メイクは控えましょう。
洗顔をするときは、ゴシゴシこすってはいけません。泡立てた洗顔料を少しの間ニキビの上に乗せ、やさしく洗い流すようにしましょう。
スキンケアした上からマスクを着けるときは、保湿のしすぎに注意です。あまりベタベタした状態でマスクを着けると、毛穴がふさがれてニキビを悪化させてしまう原因になります。
マスクニキビが気になる場合は、マスクの素材を見直し、なるべく肌にやさしいものを使うようにしてください。通気性が良く、清潔感が保たれるようなものを使用するしましょう。
おすすめなのは、マスクと皮膚の間にガーゼを挟むことです。マスクのズレが軽減されるので、摩擦による刺激を防ぐことができます。時間が経ったり汚れたりしたときは、中のガーゼを交換すれば簡単に清潔な状態にできるので手軽です。
夜、マスクを外せる時間は貴重なケアタイムです。これから暑くなる季節ではありますが、お風呂では湯船に浸かり、体をあたためて毛穴を開放しましょう。ホットタオルを用意し、マスクが当たる部分を覆うようにすると、毛穴の中の汚れが出てきやすくなります。無理やりゴシゴシ洗うよりもやさしくケアができるのでおすすめです。
ホットタオルは、濡らしたタオルを電子レンジであたためれば簡単にできます。
血行不良もニキビの原因になるので、体をあたためて血行を促進するのも大切です。
毛穴が開いたあとは、さっぱりした化粧水などで肌を引き締めます。ビタミンAを含むスキンケアアイテムを使うと、肌の代謝が良くなり、皮脂のコントロールもできます。
マスクニキビが繰り返しできるときは、同じところに菌がいるということです。1日2回の洗顔を徹底し、患部を清潔に保つようにしましょう。
皮膚科で適切なスキンケアを教えてもらうことも大切です。ニキビが慢性化すると、治ったときにも痕が残りやすくなってしまうので、受診して菌の繁殖を防ぐよう相談してみてください。
マスクニキビができる人は、それだけマスクをしている時間が長いといえます。マスクをしている時間が長いということは、職場や学校など、気を張る場所に長時間居るということでもありますので、忙しくて疲れがたまっている可能性も高いです。
そんなときは、生活を見直し、しっかり休息や睡眠をとることも大事です。
マスクの中にも爽快感のある香りを忍ばせてみたり、好きな香りの化粧品を使ったりして、リラックスできる環境づくりを心がけましょう。
東京医科大学医学部医学科を卒業後、麻酔科学講座入局。 麻酔科退局後、明治通りクリニック皮膚科・美容皮膚科勤務。 院長を務め、平成24年より医療法人容紘会高梨医院皮膚科・ 美容皮膚科を開設。副院長として勤務しています。