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鈴木稚子先生
ナイアシンアミドとはビタミンB群の一種。シミやシワなどの肌悩みに有効であると、厚生労働省から医薬部外品の承認を得ている成分です。より効果を実感するには、使うタイミングなども考慮することが大切です。ナイアシンアミドの美容効果や使い方、使用時の注意点について詳しく紹介します。
目次
ナイアシンアミドはビタミンB群の一種で、化粧品では歴史ある美容成分です。まずは、ナイアシンアミドとはどんな成分なのか、概要と特徴について紹介します。
ナイアシンアミドはビタミンB群の中のビタミンB3で、別名ニコチン酸アミドと呼ばれます。「美白」「シワ改善」「肌荒れ」の3つにおいて、医薬部外品の有効成分として承認されている注目の成分です。水溶性の性質を持ち、化粧水や美容液などに多く配合されています。
なおナイアシンアミドは、鶏肉や魚介類などの食べ物に含まれるナイアシンと形態は異なるものの、同じものです。体内でも必須アミノ酸のトリプトファンから合成されます。
ナイアシンアミドの大きな特徴は、低刺激性であること。シワの改善に有効とされるレチノールや、美白に有効とされるビタミンCと比べると肌への刺激が少なく、敏感肌や乾燥肌の人でも使いやすい成分です。ナイアシンアミドも刺激が全くないわけではありませんが、安全性の高い成分のため、肌質や年齢を問わず使えます。
ナイアシンアミドは、医薬部外品と化粧品のどちらにでも使える成分です。医薬部外品とは、厚生労働省によって効果が認められた成分が規定の濃度含まれているものを指します。ナイアシンアミドを医薬部外品として使う場合は、含有量は0.0001%~3%と範囲が決められていて、パッケージに有効成分として記載されます。
一方、化粧品には濃度の規定がありません。医薬部外品より濃度が低い場合もあれば、反対に高濃度で配合されている場合もあります。敏感肌で心配な人は医薬部外品、集中的にケアしたい人は高濃度の化粧品、のように使い分けできます。
ナイアシンアミドはシワの改善や美白、肌荒れに効果があるとして厚生労働省から認可されている成分です。効能効果について詳しく見ていきましょう。
ナイアシンアミドには、肌のうるおいをキープするために欠かせないコラーゲンやセラミドの生成を促す一方、シミの元となるメラニンの生成を抑える働きがあります。そのためナイアシンアミドが配合された化粧品を使い続けることで、シワの改善、美白効果、乾燥や外部刺激による肌荒れ予防効果が期待できます。
ナイアシンアミドの効能効果として大きく注目されているのが、シワの改善です。年齢によるシワは、コラーゲンやエラスチンなどの減少が主な原因です。ナイアシンアミドはコラーゲンの生成を促進しながら減少を抑え、肌にハリを出すことでシワの改善を促します。
ナイアシンアミドはもともと美白や肌荒れの有効成分として認められていましたが、シワの改善効果が認められたのは2018年頃です。それがきっかけで、近年ナイアシンアミドは一気に注目を集めています。
ナイアシンアミドは、シミ予防を始めとする美白ケアの有効成分としても、もともと認められています。紫外線を浴びるとメラノサイトという細胞がシミの原因となるメラニンを生成し、肌の表面に送ります。通常、メラニンはターンオーバーとともに排出されますが、加齢などでターンオーバーの周期が乱れるとそのまま肌に蓄積され、色素沈着を起こしてシミになってしまいます。
そこでメラニンの生成を抑えたり、肌表面への移動を阻害したりする働きを担うのがナイアシンアミドです。日焼け止めアイテムと併用すれば、美白・シミ予防効果をより高められます。
ナイアシンアミドは肌のうるおいを保つセラミドを増やす働きがあり、肌荒れ予防にも有効です。肌のバリア機能は角質層がセラミドによって満たされることで、乾燥やさまざまな外部刺激から肌を守る機能が働きます。
しかし、セラミドはターンオーバーの乱れや洗顔のしすぎ、加齢によって減少してしまうことも。ナイアシンアミドでセラミドの生成を活発にすることにより、トラブルのないすこやかな肌へ近づけます。
ナイアシンアミドをより効果的に使うには、ケアに取り入れるタイミングや他の成分との相性なども意識することが大切です。ナイアシンアミド配合アイテムのおすすめの使い方を紹介します。
ナイアシンアミド配合のアイテムは、基本的に朝晩問わずいつでも使用できます。エイジングケアを目的にするなら、夜だけではなく、朝晩ともに使うのがおすすめです。特に、肌が生まれ変わる夜は美容液やクリームなどで念入りにケアを。寝ている間は成長ホルモンが分泌されるため、昼間の肌ダメージを回復できます。
ただ、オイリー肌の人はナイアシンアミド配合の美容液やクリームだと、油っぽすぎると感じるかもしれません。「でも化粧水だけでは物足りない…」という時は、ナイアシンアミドの原液がおすすめです。原液であればさらりと使いやすく、効果をストレートに実感しやすいでしょう。
また、時間のない朝は原液美容液を活用することで、オイリー肌の人でもべたつきにくく、しかもすぐにメイクできて便利です。
使用する目的に応じてナイアシンアミドと他の成分を併用すれば、相乗効果でより高い効果が狙えます。例えばシワの改善が目的なら、同じく有効成分として厚生労働省に承認されているレチノールの併用がおすすめです。使用する順番は、ナイアシンアミドが含まれた化粧水や美容液を塗ってから、レチノール配合のクリームで蓋をすると良いでしょう。その他、美白にフォーカスしたいならトラネキサム酸と併用する方法もあります。
なお、ナイアシンアミドとAHAなどのピーリング成分を併用すると、ほてりやひりつきを感じる場合があるので敏感肌の人は避けた方が安心です。他のスキンケアアイテムとナイアシンアミドを併用する際は、商品に記載されている注意事項をしっかり守りましょう。
ナイアシンアミド配合のアイテムは、効果を感じるまで1~3ヵ月ほど継続して使用しましょう。化粧品に含まれる美容成分の効果は、肌が生まれ変わるターンオーバーの周期(1ヵ月ほど)に合わせて感じるものです。ナイアシンアミドは肌への刺激が少ない分、効果は比較的おだやかに現れます。そのため肌に異常が見られない限りは、じっくり使い続けて様子見を。できるだけ効率良く高い効果を得たいなら、同じメーカーのライン使いがおすすめです。
ナイアシンアミドは肌トラブルを抱えていても使えるほど低刺激で、基本的に肌への副作用はありません。しかし人によっては肌質に合わず、まれにかゆみや赤みが出ることも。その場合は使用を中止して、医師に相談しましょう。敏感肌などで不安がある人は、使用前にパッチテストをすると安心です。
ナイアシンアミドは、シワ改善、美白、肌荒れ改善に効果があると厚生労働省から認められた美容成分です。肌に刺激が少なく使う人を選びにくい点がメリット。適切な使い方をすることで、より高い効果が期待できます。いつものスキンケアに、ナイアシンアミド配合の化粧品を取り入れてみてはいかがでしょうか。
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1994年東京慈恵会医科大学医学部卒業。同大学皮膚科学教室国立大蔵病院皮膚科臨床研究部を経て、2000年用賀ヒルサイドクリニック院長。2017年六本木スキンクリニックを開院。美肌の予防医療を専門とし、現代女性たちの肌悩みを解消するアドバイス・指導などを行う。