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鈴木稚子先生
レチノールのA反応とは、レチノール配合の化粧品などを使用した時に起こる赤みや皮むけなどのこと。ターンオーバーの促進によって現れる一時的な副作用ですが、実際に起こると心配になる人も多いのではないでしょうか。レチノールのA反応について、症状や予防方法などを紹介します。
目次
レチノール配合化粧品などを使った時に起こる赤みやかゆみは、A反応と呼ばれています。肌に合わないから起こるのではなく、ビタミンAを肌に慣らすための準備段階と言える反応です。まずは、レチノールA反応とはどのようなものか見ていきましょう。
レチノールの使用時に起こることがある、赤みや皮むけなどの症状をA反応と呼びます。他に「レチノイド反応」や「レチノールバーン」と呼ぶこともあります。ビタミンA誘導体の一種であるレチノールは、ターンオーバーの促進や、ニキビ、肌荒れなどの肌トラブルへの効果が期待できる成分です。
ただし、ビタミンAが不足した肌にレチノールでビタミンAを補給すると、最初は吸収しきれずに刺激となってしまい、A反応が発生するケースがあります。レチノール使用時に起こった症状がA反応である場合は、肌がレチノールに慣れてくることで改善されます。
A反応が現れると肌にダメージを与えているのではないかと思うかもしれませんが、実は肌の生理反応なので悪いものではありません。皮膚内にはレチノイド受容体と呼ばれる、ビタミンAを受け取る器の役割を持つ組織があります。レチノールを使用することで代謝が急激に促されますが、レチノイド受容体の許容量が少ない状態だと、吸収しきれなかったビタミンAが溢れてA反応が起こります。
レチノールを使い続けるとレチノイド受容体の許容量は徐々に大きくなるため、肌がビタミンAに慣れてA反応は治まっていくでしょう。最初は不安かもしれませんが、A反応が現れるのは肌のターンオーバーが整う準備段階と捉えて問題ありません。
レチノールによるA反応の主な症状は以下の通りです。
A反応が治まる期間には個人差がありますが、一般的には数日~1週間、長くても3~6週間程度と言われています。ただし、あまりにも症状が強い、またはいつまでも症状が改善しない場合は、A反応ではない可能性があるので皮膚科を受診しましょう。
レチノールのA反応は誰しも必ず起こるのではなく、出ない人もいます。出やすい人の特徴やタイミングを紹介します。
レチノールのA反応は肌の水分と油分のバランスが崩れ、バリア機能が低下している乾燥肌・敏感肌の人に現れやすい傾向があります。乾燥肌や敏感肌ではなくても、疲れや体調不良などで肌のターンオーバーが乱れている時や、花粉症の症状が出て免疫力が低下している時も起こりやすいと言われています。
また、生まれつきレチノイド受容体やビタミンAを作る酵素が少ない人や、日光に敏感な人はビタミンAの処理能力が低いため、症状が出やすいかもしれません。
配合されているレチノールの濃度が高いほど、A反応は出やすくなります。そのため、初めてレチノール配合化粧品を使う際は、低濃度のものを選ぶのがおすすめ。慣れてきたら徐々に濃度を上げていくと、A反応が出にくいでしょう。
既にレチノール配合化粧品を使用したことがある人は、レチノイド受容体がある程度増えているため、初めて使用する人と比べてA反応は出にくい傾向にあります。ただし、これまでよりレチノールの濃度が高い化粧品を使うとA反応が出る場合があります。反応が出た場合は一旦濃度が低いものに切り替え、肌が落ち着いてから濃度を戻すと良いでしょう。
これまでレチノール配合化粧品を使用したことがない人は、初めて使うタイミングでA反応が出るケースも多いと言われています。これはターンオーバーが促されることで、一時的に肌が薄くなって敏感になるためと考えられます。先述したように、A反応は肌がビタミンAに慣れると自然に治まる生理反応なので、保湿などのスキンケアを入念に行いながら様子を見ましょう。
「レチノールのA反応が出たらどうする?」と心配な場合は、A反応が出にくい使用方法や保湿を意識したスキンケアを行ってみましょう。A反応を予防する方法を紹介します。
レチノールに肌が慣れていない状態で化粧品を毎日使い続けるとA反応が起こりやすくなるので、まずは週2日程度の頻度から始めるのがおすすめ。加えて、パッケージに書かれている規定量よりも少ない量で使い、様子を見るのもA反応の予防につながります。最初は週に2日、夜だけ使用して肌に慣らしていき、徐々に使用する日数を増やしてみてください。
いきなり高濃度のレチノール配合化粧品を使うのではなく、低濃度のものから慣らしていくこともポイントです。ほとんどのレチノール配合化粧品は濃度が0.3パーセント以下ですが、まれに1パーセント以上の高濃度のものも販売されているので、使用前にパッケージを確認してみましょう。最初は0.1パーセントの低濃度のものから始め、徐々に0.3、0.5と上げていくとA反応を防ぎやすくなります。
レチノールのA反応を予防するには、化粧水やクリームなどで水分や油分をしっかりと補うのが大切。レチノールを使い始めるとターンオーバーが急激に促進されて、肌が薄く、デリケートな状態になり乾燥しやすいためです。保湿をしてからレチノールを使用すると刺激を低減できると言われているので、保湿力の高いスキンケアアイテムを併用するのがおすすめです。
洗顔の見直しや紫外線対策などで、肌への刺激を減らすこともレチノールA反応の予防につながります。肌が敏感になっているレチノールの使い始めは、洗顔の回数を1日2回までにしたり、洗顔料の使用回数を減らしたりすると良いでしょう。洗顔や拭き取りは擦らずに優しく行い、肌に摩擦を与えないようにするのもポイントです。
レチノールは継続的に使用して効果が得られる成分なので、長い目で様子を見るのが大事。また、併用を避けた方が良い成分もあります。
レチノールは肌への効果が高いことで人気の成分ですが、即効性があるわけではありません。効果を実感するには、数週間~数ヵ月必要な場合もあります。化粧水やクリームを使って行う毎日のスキンケアと同様に、継続的に使用することが何より大切と言えるでしょう。
レチノールは紫外線で分解されやすい性質を持っているのに加えて、使い始めは一時的に肌のバリア機能が低下し、紫外線の影響を受けやすくなります。そのため、日中のケアには不向きで、製品によっては夜のみの使用が推奨されている場合も。日中のケアにレチノール配合アイテムを使う際は、日焼け止めや日傘、帽子などで紫外線による刺激から肌を守りましょう。
美白効果が期待できる成分として人気のハイドロキノンは、レチノールとの併用をおすすめできません。長期的な使用で肌悩みを改善に導くレチノールに対し、ハイドロキノンは短期間で集中的に改善するのを目的として配合されています。強い作用が働き炎症を起こしてしまうおそれがあるので、自己判断で併用するのは避けましょう。
美白効果が期待できる成分の中では、レチノールと同じレチノイドに分類されるトレチノインなら併用しても問題ないと言われています。
レチノールのA反応が心配な人には、“次世代レチノール”として注目を集めるバクチオールがおすすめ。バクチオールは、マメ科植物の「オランダビユ(バブチ)」の種子から抽出される天然成分で、ビタミンAの一種です。
バクチオールには、シワ・肌荒れの改善や肌のハリ感アップ、シミの予防・改善など、さまざまな美容効果が期待できます。レチノールと同様の効果を持ちつつ、低刺激でA反応は起こらないので安心して使いやすいでしょう。また紫外線にも強いため、朝のケアに取り入れても問題ありません。
バクチオールについて詳しく知りたい人は、ぜひ以下の記事をご覧ください。
レチノール配合化粧品によるA反応は肌に悪いものではなく、ターンオーバーが整いつつある段階と言えます。一時的に肌は敏感になりますが、しっかりとしたスキンケアや紫外線対策を行っておくと、A反応を予防しながら使い続けられるでしょう。
1994年東京慈恵会医科大学医学部卒業。同大学皮膚科学教室国立大蔵病院皮膚科臨床研究部を経て、2000年用賀ヒルサイドクリニック院長。2017年六本木スキンクリニックを開院。美肌の予防医療を専門とし、現代女性たちの肌悩みを解消するアドバイス・指導などを行う。