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吉岡 容子 先生
夏が近づき気温が上がる頃や、秋になり空気が乾燥してくる季節の変わり目に、頭皮にかゆみを感じたり湿疹ができたりとトラブルが増えていませんか? トラブルに対処し健康な状態に保つにはどのようなケアをすれば良いのか、皮膚科医が解説します。
目次
1年を通して頭皮トラブルで皮膚科を受診する方は一定数います。年齢層は10代の若い世代から80代くらいまでの幅広い年齢層におよびます。特に数が増えるのは春先から夏にかけてです。主な症状はかゆみや湿疹ですが、原因はそれぞれだと考えられます。
花粉症の季節には花粉の付着による肌トラブルを起こす方が増えますが、頭皮も皮膚の一部なので同様にトラブルが多くなります。炎症が起きるとかゆくなったり赤くなったりします。
夏にかゆみが出る原因の多くは汗です。かゆみがひどくなると湿疹になり、かいてしまうと乾燥して頭皮が硬くなってしまい、さらに悪化すると皮膚がはがれてきます。
また、紫外線によるダメージでも皮膚が乾燥してかゆくなったり硬くなったりすることがあります。
日差しが強いと帽子を被る人も多いですが、汗をかく季節に帽子を被る機会が多い人は頭皮トラブルを訴える傾向にあります。特に髪の毛の量が多い方はムレやすいので注意が必要です。ムレによるかゆみは男性の方が起こしやすいですが、女性も汗をかく量が多い若い世代の方は気をつけましょう。
寒い季節に気になるのは乾燥によるかゆみです。頭皮も顔や体の皮膚と同様、冬は乾燥しやすくなり、トラブルになりやすいです。
季節を問わずトラブルの原因になっているのが、普段使っているシャンプーやコンディショナーによる刺激です。市販品でよく泡立つものは界面活性剤によって強い洗浄力を発揮するものが多いですが、肌に合わなかったり刺激が強すぎたりすると頭皮が炎症を起こすことがあります。また、流し切れずにシャンプーが頭皮に付着したままになっていて、トラブルになるケースもあります。
皮膚は体全体でつながっていますので、頭皮にトラブルが起きるとすぐ近くにある顔の皮膚にも同じようなトラブルが起きやすくなります。湿疹や炎症が顔にも出やすくなるので注意してください。
頭皮が硬くなると顔もたるみやすくなったり、くすみや小じわの原因になったり、美容にも良くありません。皮膚がガサガサになったり色素沈着を起こしたりする前に、何か症状があるときは早めの治療を心がけましょう。
頭皮にトラブルが起きても、皮膚の状態は自分で確認しにくいものです。ある程度は鏡で見ることもできますが、後頭部になるとやはり見にくいと思います。
かゆみや違和感を覚えたときは自己判断せず、なるべく早めに皮膚科を受診して、適切な治療を受けることをおすすめします。
受診すると、素早く症状を抑える塗り薬を処方されるのが一般的です。皮膚が乾燥している場合には保湿剤が出されることもあります。頭皮ニキビができている場合は、ニキビの薬が適用されます。
湿疹がひどいときは通常のシャンプーでは刺激が強いこともあるので、そうした場合には肌にやさしいものや、湿疹の肌にも使える専用のシャンプーを紹介してもらえることもあります。
頭皮にトラブルが起きる人は、普段使用しているシャンプーやコンディショナーが肌に合っていないことも考えられます。まずはシャンプー剤の見直しを検討してみましょう。
乾燥が気になる方は、洗い過ぎている可能性もあります。洗髪は基本的に夜1回で十分です。朝シャンプーをするのは、寝ている間にかいた汗がどうしても気になる場合だけにして、日常的に朝晩シャンプーするのを習慣にするのは避けましょう。
汗による頭皮トラブルは女性の場合、後頭部の生え際から首にかけて起きる人が多いです。首周りは髪の毛が当たって刺激になると症状が悪化してしまうことがあります。髪はまとめてすっきりさせ、なるべく皮膚に刺激を与えないようにしましょう。
軽いかゆみ程度であれば、セルフケアで改善することも可能です。特に乾燥が原因の場合は保湿することで症状がやわらぐこともあります。
顔は洗った後に化粧水や美容液で保湿するのに、頭皮は洗いっぱなしという人が少なくありません。頭皮も皮膚の一部なので、洗髪後はきちんと保湿してあげましょう。
顔に使っている化粧水や美容液を少量手に取って揉み込む方法でも構いませんし、頭皮専用の美容液や発毛剤、育毛剤などを使ってケアするのも良いでしょう。
かゆみが慢性的に続いているときは、水虫を始めとする真菌症、ダニ、しらみなどが原因になっていることもあります。症状に合わせて適切に治療をするためにも、早めの受診をおすすめします。
女性の若々しさは髪に表れると言います。体の末端である髪がキレイであるということは、細部にまで栄養が行き渡って、健康でみずみずしい象徴。頭皮は美しい髪を保つための土台となりますので、日常のケアでトラブルを予防し、良い状態を作っておきましょう。
頭皮を健康に保つためには、まず日常的に使うシャンプー類を見直しましょう。刺激が強すぎるものは避け、肌にやさしく自分に合ったものを選ぶようにしましょう。シャンプーの回数も、自分の状態に合わせるようにしましょう。
洗い残しはトラブルの原因になるので、すすぎをしっかりして、頭皮を清潔にしておきましょう。
また、リンスやコンディショナーは頭皮につけないようにして使用しましょう。リンス類は洗い残しが起きやすく、頭皮についたままになっていると炎症の原因になります。毛先だけに軽くつけて、しっかり洗い流すようにしましょう。
紫外線や花粉から頭皮を守るためには帽子を被るのが有効です。紫外線の刺激は頭皮だけでなく髪も傷めてしまうので、帽子を被るときには髪をなるべく中に入れたり、コンパクトにまとめることをおすすめします。
ただし、汗をかく季節にはムレにも注意が必要です。帽子は通気性の良い素材を選んでこまめに洗い、清潔な状態で使用するようにしましょう。花粉が飛んでいるときは洗った後は外に干さず、部屋干しにしてください。
日差しを避けるのであれば、体全体がカバーできる日傘を使用するのも良いでしょう。
最近は40歳を過ぎる頃から頭皮のトラブルに悩む女性が増えています。女性のAGAで皮膚科を受診される方も多いです。
頭皮も顔を同様に、若いときからのケアが肌を育てていきます。今トラブルが起きていなくても、保湿や血行促進などのケアを日頃から行うのが、若々しく健康な頭皮を保つコツです。顔のスキンケアと同様に日々のお手入れをしましょう。
毛先が乾燥して絡まったままでいるのも頭皮に負担がかかる原因となります。ヘアオイルや美容液などで髪をケアするのも忘れないようにしましょう。
若々しい頭皮や髪を保つためには、内側からのケアも欠かせません。顔や体の肌を作るのと同じように頭皮への美容意識を高め、頭皮環境を整えましょう。十分な睡眠やストレスをためない生活、そしてバランスの良い食事が大切です。
特に女性は年齢を重ねるとホルモンバランスが崩れ、皮膚が弱くなることでトラブルを起こしやすくなります。減少する女性ホルモンのはたらきを補うには、豆腐や納豆などのイソフラボンが含まれた食材を摂るのが効果的です。積極的に大豆製品を食べるようにしましょう。
内側からも外側からも日々のケアを行い、健やかな頭皮を育てて、快適な毎日を過ごしましょう。
東京医科大学医学部医学科を卒業後、麻酔科学講座入局。 麻酔科退局後、明治通りクリニック皮膚科・美容皮膚科勤務。 院長を務め、平成24年より医療法人容紘会高梨医院皮膚科・ 美容皮膚科を開設。副院長として勤務しています。