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コッツフォード良枝先生
夏のベタベタじめじめとした汗は、不快になるだけではなく、そのまま放置していると症状が悪化し、赤みやかゆみ、かぶれなどのトラブルの原因にも。そこで今回は汗が原因で起こる「汗かぶれ」について、その対処法や治療法を皮膚科医のコッツフォード良枝先生に解説いただきます。
目次
汗が原因で起こる皮膚のトラブルは主に3つあり、それぞれ原因や症状も異なります。
身体から出る汗には、塩分やアンモニアなどの成分が含まれています。こうした成分が肌を刺激することで皮膚が荒れたり、かぶれた状態になることを、汗かぶれ=汗による接触皮膚炎と呼びます。汗の塩分やアンモニアなどが皮膚に付着することで、部位全体が赤くなったりかゆくなったりするのが特徴です。
大量に汗をかいた時に汗を排出する「汗管(かんかん)」が一時的に詰まり、汗がスムーズに排出されないことが原因で起こるのがあせも。汗管につまって排出されないまま、汗が肌の内側にとどまることで、かゆみや発疹(赤いブツブツ)が多く出るのが特徴的です。
季節の変わり目などに、手指や足底などに数mm大の水ぶくれが出るのが特徴。特に夏季に多く発症するため、発汗との関連が大きいとされていますが、発汗と関係がない場合もあり、原因があまり分かっていない疾患です。
「汗かぶれ」や「汗あれ」と呼ばれるような、汗による接触皮膚炎の主な初期症状は、一般的にまず皮膚が赤くなることからはじまり、かゆみやヒリヒリ感を伴うこともあります。皮膚がわずかに盛り上がりブツブツするようになることも。これがさらに悪化する原因としては、主に搔きむしってしまう場合がほとんど。皮膚は掻くとさらに炎症が広がり、症状が出ている部位がどんどん大きく、深くなります。そうなると繰り返し炎症が起こり、さらに治りづらくなるという悪循環に陥ってしまうのです。掻いたりひっかいたりすることで皮膚に細菌が入って、ただれたり水ぶくれになったりする場合もありますので、速やかに治療をするようにしてください。
また、何も対策しないまま放置し、これを繰り返していると肌の炎症による色素沈着で、なかなか治らない頑固なシミに変わってしまう可能性がありますので、ただの汗かぶれと思わず、しっかりと対処することが必要です。
汗かぶれは、汗に含まれる塩分やアンモニアが肌を刺激し、皮膚が荒れたりするトラブルです。こうした汗による接触皮膚炎は、もともとお肌のバリア機能が低下している人に起こりやすいとされています。
肌が乾燥していてバリア機能が低下した状態で汗をかくと、汗の成分が通常以上の刺激になります。汗はあくまで水分であり、余分な熱が出ているだけの状況。また、汗は脂分ではないため、汗っかきだからとしっかり保湿をしないと、肌が乾燥してしまうので注意。特に夏はエアコンの風にさらされたり、紫外線ダメージを受けやすいため、さらに乾燥が加速しやすくなりますのでしっかり保湿を忘れずに。
汗の成分が肌を刺激し起こる肌かぶれは、汗をかいたままにしておくことが大きな原因。全身の中でも、汗をかく部位はさまざまありますが、顔などはすぐに気づいて汗を拭くため、症状としてはあまり多くない部位です。
それよりは、シャツの襟が触れる首回り、下着が密着するような脇や胸の下、お腹まわり、ひじの内側など汗がたまりやすい場所に現われることが多いよう。特に大人は子どもに比べて新陳代謝が悪いため、掻き壊して重症化すると、色素沈着などの痕を残す恐れもあります。たかが肌かぶれと侮らず、症状の軽いうちに、しっかりと治療を行うことが大切です。
汗によるかぶれを防止するためには、普段から皮膚表面に汗を残したままにしないことが大切。できればガーゼや天然素材のタオルなど、肌にやさしいもので軽くふき取るのがおすすめです。大量に汗をかくような屋外レジャーやスポーツなどの際は、着替えの衣類を持っていくのも◎。
また、コンビニやドラッグストアで気軽に買える汗拭きシートなどは、メントール成分が快適に感じられる商品もありますが、刺激が強いものもあるので注意。またそれらに含まれるアルコールや防腐剤で肌がさらに炎症を起こし、ひどくなる場合もあるので、肌にやさしいものを選び、さらにゴシゴシ擦らず優しくふき取るのがポイントです。
汗をかいた後、しっかりと汚れを洗い流したあとは、夏でも保湿するのが正解。肌が乾燥していると、汗かぶれの原因ともなるバリア機能の低下にもつながるので、できれば朝晩、お風呂上りにボディクリームを塗るなどしっかりとケアをするのがおすすめです。
夏は肌もべたつきやすいので、保湿ケアをしない方も多いのですが、汗をかいていても肌は乾燥しています。べたつきが気になる方なら、さらりとしたテクスチャーのミルクタイプを選ぶなど工夫して、しっかりと保湿ケアを忘れずに。
汗かぶれをしっかり避けたいなら、肌に直接触れる下着には通気性がよく吸汗・速乾性のある素材を選ぶなど、日頃から意識しておくのも大事。また、寝ている間には大量に汗をかくため、パジャマには、吸水性が高く、保湿性や通気性にも優れている、ガーゼやコットン素材のパジャマや肌着を選ぶのもよいでしょう。
汗には体内の老廃物を排泄する機能もあるため、食べ物の影響も大きいです。食生活においては、脂っぽいもの、揚げ物やファストフード、インスタント食品など、脂肪分の多い食べ物をよく食べる方は注意。脂分の摂り過ぎにより、皮脂の分泌の増加原因になっている可能性があります。
逆にしっかり摂りたいのはお水。水分を摂取して体内の水分を定期的に入れ替えてあげることはとても大事です。なるべく汗をかく前に水分を摂取することを心がけ、こまめに補うクセをつけておくのがよいでしょう。正しく汗を出して水分を循環させてあげてください。
汗かぶれなど、汗が原因の皮膚トラブルはそのまま放置せず、早めの対処が重要です。掻きむしるとジュクジュクして治りにくくなりますし、汗をかくとさらにその部分が汗でしみることも。赤みやかゆみがあって炎症を起こしている時は、まずは清潔にしてから部位を冷やし、炎症をすばやく鎮める効果のあるステロイド軟膏などを使って速やかに症状を抑えることが早く治す近道です。治りにくい場合や、症状が悪化した際、症状によっては内服薬の処方が必要な場合もありますから、すぐに医療機関で専門医による適切な治療を受けてください。
汗かぶれだと思って市販のステロイド軟膏を塗っていたら、症状が悪化したという方もいらっしゃいます。例えば、マラセチア毛包炎(もうほうえん)と呼ばれる、汗を餌にするカビ(真菌)の一種だった場合。これは多汗、高温多湿、衣服の蒸れなどが原因で、胸、背中、腕の外側などにみられることが多いのが特徴です。この場合も、軽いかゆみを伴う炎症なので、汗かぶれと似ているのですが、ステロイド軟膏を塗ると、逆にカビが繁殖し悪化してしまいます。そうなるとなかなか治りにくくなってしまいますので、炎症が出たなと思ったら自分自身で判断せず、まずは医療機関で診てもらってください。
不快なだけでなく、さまざまな皮膚トラブルの原因ともなる汗ですが、皮膚に良くない影響を及ぼすだけの悪者ではなく、皮膚の健康に欠かせない働きがたくさんあります。たとえば汗の役割で大切な、体温の調節機能。気温の上昇や運動で体温が高くなった時、汗をかくことで体温を下げ、平熱を保つことができます。汗をかかないと熱が身体の中にこもってしまうため、汗をかくことは体にとって、とても重要な機能といえます。
近年はコロナ禍であまり外に出ず汗をかかないことで、体の熱をうまく出せず、体内の調節がうまく機能していないことも。お風呂ではバスタブにしっかり浸かったり、軽い運動などを行い、毎日汗をかくようにすると、余分な水分や老廃物が体外へ排出されて新陳代謝が良くなり、お肌の健康にもつながります。
だからこそ「できるだけ汗をかかない」というよりは、汗をかいた後、皮膚トラブルを起こさないためのケアをしっかり行い、汗と上手に付き合って、健康なお肌を保っていきましょう。
(コッツフォード良枝先生)
汗かぶれを事前に予防するためには、肌表面に汗を残さずしっかり清潔にした後に保湿することが大切。まずは、メゾンレクシアのボディ&ハンドウォッシュで、優しく汚れを落として保湿前の準備を。
きめ細かい濃密な泡と、ふんだんに配合された植物エキスで、肌をしっかり洗いながらも、しっとりなめらかな素肌を作り上げます。
汗かぶれの原因になる肌の乾燥は、バリア機能の低下にもつながるため、ボディケアアイテムで肌にしっかりと潤いを与えるのが◎。べたつかない、さらりとしたテクスチャーが人気の、メゾンレクシアのボディミルク「サイレントエコー」なら、使い心地もよく、汗ばむ季節でも気持ちよく使用できます。
山梨大学医学部卒業後、日本医科大大学付属病院麻酔科学講座入局ののち、大手美容外科、野本真由美クリニック東京院の院長を経て、銀座禅クリニックの院長に就任。TVやWEB、雑誌などメディア出演も多数。