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監修者:公益社団法人 日本アロマ環境協会認定環境カオリスタ、アロマテラピー検定1級 藤巻慧子
数ある香水の中でも男女ともに高い人気を誇るのが、マンダリンやベルガモットなど、柑橘系の香りを配合した香水です。清潔感のある爽やかな香りが魅力なので、香水初心者の方でも取り入れやすいでしょう。この記事では、柑橘系香水の特徴や楽しむポイントの他、洗練されたおすすめのフレグランスを紹介します。
目次
監修者:公益社団法人 日本アロマ環境協会認定環境カオリスタ、アロマテラピー検定1級 藤巻慧子
柑橘系の香りは、シトラスノートとも呼ばれます。まずは、柑橘系の香りの魅力や歴史を探っていきましょう。
香水やアロマの世界では、香りの系統はノートと呼ばれ、8つに分類されています。シトラスノートもそのうちの1つ。レモン、ベルガモット、オレンジ・スイート、グレープフルーツ、プチグレン、マンダリン、ゆず、ライムなどの柑橘系が属しています。果実のように新鮮で爽快感のある、ユニセックスな香りが特徴的です。
欧米では体臭を消すために古くから発達したと言われている香水の文化。初めて香水が誕生したのは16世紀末、大流行したのは18世紀後半と言われています。実は、柑橘系香水の歴史も同様に長いのです。
1612年に創業した、サンタ・マリア・ノヴェッラというフィレンツェの薬局には、伝統的な香りのレシピがあります。その香水は1533年に誕生し、「王妃の水」と呼ばれてきました。「王妃の水」はシトラスがベースの爽やかな香りが特徴的です。遠い昔から現在まで、その人気は衰えることを知りません。シトラスの香りは古くから、人々に好まれてきたと言えるでしょう。
柑橘系の香りは、交感神経を刺激して脳のスイッチを切り替える効果を持つと考えられています。集中力やパフォーマンス能力を高めたい時、気分をリフレッシュしたい時にはぜひ柑橘系の香りを選んでみてください。日本では香水の文化になじみの薄い人もいますが、果物をイメージさせる柑橘系の香りは爽やかなので、比較的受け入れられやすい傾向があります。
また、人の肌はそれぞれ特有の香りを持っています。肌の香りはパーソナルカラーのように分類することができ、日本人は甘さのあるスウィートスキンが多い傾向。スウィートスキンは、柑橘系の香りと相性が良いと言われています。日本人の肌に合いやすく爽やかな柑橘系の香りは、香水になじみがない人でも挑戦しやすいので試してみてはいかがでしょうか。
柑橘系の香りは胃腸に良いと言われており、消化促進や食欲増進作用に期待できます。オレンジやレモンの他にも、ベルガモットやライムなど、柑橘系の種類はさまざまです。
柑橘系の精油成分には、フロクマリン類が含まれていることが多いのもポイント。フロクマリン類には光毒性があるため、皮膚に塗布した状態で紫外線を浴びると肌にダメージを与える恐れがあります。昨今ではフロクマリン類を取り除いた精油も誕生しており、「フロクマリンフリー」と呼ばれたり「FCF」と表記されたりしています。
ここからは、柑橘系の各精油が持つ特徴と、フロクマリン類の有無をチェックしていきましょう。
オレンジの香りは、ジューシーでみずみずしい印象。オレンジの香りがする代表的な精油は、オレンジ・スイートとビターオレンジです。それぞれ、「アマダイダイ」「ダイダイ」という和名がついています。
ビターオレンジは、抽出される部位によって精油の名称が異なるのが特徴的です。果実はビターオレンジとして流通し、葉は同じシトラスノートに属するプチグレン、花はフローラル系のネロリとして扱われます。ネロリには特徴成分であるネロリドールが入っていますが、他の部位から抽出されるビターオレンジやプチグレンには含まれていません。同じ植物から採れる精油でも、部位によって香りや、香りを構成する成分が異なるため名称が変わるのです。
また、オレンジ・スイートにはフロクマリン類が含まれませんが、ビターオレンジにはフロクマリン類が入っています。同じオレンジの香りとして分類されますが、成分同様にフロクマリン類の有無も異なるのです。
ちなみに、香水によく配合されているマンダリンというヨーロッパで栽培されているミカン類もオレンジの香りに含まれます。フローラル系、ハーブ系、樹木系など、あらゆる香りと好相性という特徴は、オレンジの香りの大きな魅力とも言えるでしょう。
ビターオレンジの葉から抽出されるプチグレンについては、こちらの記事で詳しく紹介しています。
レモンの香りはすっきりとした爽やかさが特徴。和名も同様に「レモン」です。レモンから採れる精油は当然「レモン」として流通しますが、実は香りはレモン以外で代用が可能です。レモングラスやメリッサ(レモンバーム)が代表的で、これらは名前にレモンとありますが、異なる植物から採取されます。
レモングラスやメリッサ(レモンバーム)で香りが代用できるのには、成分が関係しています。レモンの香りを作る特徴成分、シトラールがレモングラスとメリッサ(レモンバーム)にも含まれるためです。
レモンにはフロクマリン類が含まれ、光毒性があるので、気になる場合はこれらの精油で代用するのも良いでしょう。ただし、メリッサ(レモンバーム)には皮膚刺激がありますので、使用時は注意してください。
レモンの香りは単体での使用はもちろん、他の柑橘系の香りとも相性が良く、ラベンダー、ネロリといったフローラル系の香りとの組み合わせも人気があります。
フルーツとしても人気の高いグレープフルーツは、和名も同様に、「グレープフルーツ」です。香り成分は果皮の奥深くにしかないため、他の柑橘系と比較すると精油の採れる量が少ない傾向にあります。
また、グレープフルーツの精油はd-リモネンが主成分ですので、効果効能はd-リモネンのものが色濃く出ます。ただし、香りに関してはヌートカトンと呼ばれる特徴成分が、グレープフルーツの個性を作っていると言えるでしょう。レモンと同様に、グレープフルーツも光毒性を持っています。
グレープフルーツの香りは香水に配合することで、すっきりとした雰囲気を生み出します。特に樹木系のシダーウッドやハーブ系のローズマリー、フローラル系のラベンダーとは相性が良く、おすすめの組み合わせです。リラックス効果を得たい時は、オリエンタル系のイランイランやフローラル系のジャスミン、ラベンダーが配合されている香水を試してみましょう。
和の趣を感じさせるゆずの香りは、少し青みのあるようなさっぱりした印象。和名では「ほんゆず」とも呼ばれます。
ゆずは他の柑橘系の香りとも相性が良く、さまざまな香りとブレンドしやすいのが特徴です。樹脂系であればベンゾインやフランキンセンス、樹木系ならばサイプレスやプチグレンとの組み合わせがおすすめ。ハーブと合わせるならば、バジルやクラリセージ、フローラル系ならばローズやラベンダー、カモミールローマンなど、あらゆる香料にすっきりとした香りをプラスしてくれます。
また、ゆずにはフロクマリン類が含まれないため、光毒性はありません。
レモンよりも小ぶりな球形と緑色の皮が特徴的なライムは、柑橘系の清潔感に、ほのかな苦みを加えた香りが魅力。疲労感をやわらげ、心をリフレッシュさせる香りとも言われます。
果実は、和名でも「ライム」と呼ばれます。ライムは抽出方法によって光毒性の有無が変わる点に注意が必要です。水蒸気蒸留法では光毒性が見られないのに対し、圧搾法で抽出したものは光毒性を示します。
ライムの香りと相性が良いのは、ラベンダーやネロリといったフローラル系やローズマリーなどのハーブ系です。その他、オリエンタル系のイランイラン、スパイス系のバニラやナツメとのブレンドも個性的な香りが楽しめます。
和名でも「ベルガモット」と呼ばれるこの植物は、香水の原料として最も使われる精油と言われています。香りを構成する特徴成分のベルガプテンは、フロクマリン類の一種であるため、ベルガモットには光毒性が含まれます。
優しく爽やかな柑橘系の香りの中でも、ベルガモットの香りは上品な印象があります。人気の香りなので、ベルガモットをメインとした香水が多いのも特徴です。他の柑橘系と組み合わせると爽やかさが増し、また、ゼラニウムやラベンダーなどフローラル系と合わせると落ち着いた雰囲気の香りになります。
稀少な天然香料から紡ぎだす繊細な香りが魅力の「メゾンレクシア」のフレグランスにも、スパイシーでフレッシュな香りや甘く爽やかな香りなど、柑橘系の多彩な魅力を楽しめるフレグランスが揃っています。ここからは、洗練された雰囲気を纏えるおすすめフレグランスを3つ紹介します。
青く澄みわたる地中海、黄金の果実が輝く木々。南仏の旅で出会った絵画のような情景を香りで描いた清々しいオードパルファム。ビターオレンジの木から採れる多彩な香料を調香し、爽やかで甘美な表情の中にフローラルの余韻が広がります。
心ときめくような出会い。偶然に訪れる幸運。人生の喜びを色とりどりの果実と花々で鮮やかに描き出すオードパルファム。ピンクペッパーを効かせたシトラスに甘酸っぱいベリーとプラム、可憐なフリージアが調和する、希望に満ちた香りです。
空をのぞむ山峡、朝露に濡れた草葉のみずみずしい芳香。光を浴びて力強く芽吹く、生命の輝きを思わせるオードパルファム。軽快なシトラスにミュゲ、ハニーサックルが甘さを添え、いきいきとした爽やかさの奥でやわらかな余韻が漂います。
香水はつける場所によって香り方が変化します。ここでは、柑橘系の香りをより楽しめる香水のつけ方や、香水を長持ちさせる方法を紹介します。
人の体の中で血管が表面に近い部分は、体温が高い傾向にあります。そこに香水をつけると揮発しやすくなり、香りを放ちやすくなります。柑橘系の香水のように軽やかな香りは、このような体温の高い場所につけるのがおすすめ。手首・肘や腕の内側・膝の裏・お腹などは比較的体温が高いと言われています。
その他、下記のような場所につけることで、それぞれの香り方が楽しめます。
香水は、季節や気温に合わせてつけ方や香りを変える楽しみ方があるのをご存知でしょうか。こちらの記事で、夏にふさわしい香水のつけ方を紹介しているのでぜひチェックしてみてください。
香水は加熱(温度変化)や光(日光、蛍光灯)、空気(特に酵素)に弱く、変質や劣化を起こしやすい性質を持ちます。そのため、香水は直射日光に当てず、冷暗所で保管しましょう。
特に、柑橘系の香水は揮発性が高く蒸発しやすいため、使用後は蓋がしっかりと閉まっているかの確認が重要です。もし、蛍光灯の光が当たる棚などに香水の瓶を並べて保管している場合は、蛍光灯をこまめに消すようにします。これだけでも香水は長持ちするでしょう。
香水の保管方法や使用期限については、下記の記事で詳しく解説しています。
柑橘系の香水はさっぱりとした清潔感のある香りが魅力。おでかけはもちろん、心や体を癒しリフレッシュしたい時にも活躍します。ぜひお気に入りの柑橘系の香水を手元に置いて、その爽やかな香りを楽しんでくださいね。
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WEBメディアディレクター。コンテンツSEOに特化したライターの育成も行う。自分自身の心身の健康のため、精油を学ぶ。心地よさを重視した、感覚ファーストな香り選びが得意。好きな精油TOP3はネロリ、コリアンダー、イランイラン。