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鈴木稚子 先生
肌の赤みや湿疹、ニキビ、吹き出物など様々な症状がある敏感肌。実はこのような症状の主な原因は「肌のバリア機能の低下」だと言われています。今回はこのような肌荒れなどのトラブルから肌を守る「バリア機能」を高めるための仕組みやセルフケア方法を、肌美容のプロ、皮膚科医・医学博士の鈴木稚子先生が解説します。
目次
肌の「バリア機能」とは、その名の通り、お肌を守るための皮膚の働きのひとつ。この機能によって、乾燥や紫外線、雑菌など外からの刺激から肌を守ってくれるのです。肌の構造は大きく表皮・真皮・皮下組織の3つに分類されます。表皮の表面には角層があり、その上を皮脂膜(皮脂+汗)が覆っています。バリア機能が正常に働くためには、この角層がうるおいで満たされている状態であることが大事です。
厚さわずか約0.02mmの角層を「うるおいで満たされている状態」にするのに必要なのが、「皮脂膜・天然保湿因子(NMF)・角質細胞間脂質」の3つの保湿因子です。それぞれが持つ機能によって、外部からの紫外線やアレルゲンなどの刺激による肌トラブル、肌内部から水分が蒸発することによって起きる乾燥を防ぎます。
肌のうるおいを保つ「3つの保湿因子」は表皮のいちばん上の角層の表面や、内部に存在します。ここが肌のバリア機能において大きな働きをしているのです。この3つの保湿因子を順にみていきましょう。
肌の表面にある汗と皮脂が混ざり合ったもの。表皮全体を覆いながら保護し、水分の蒸発や乾燥を防ぐ役割があります。
天然保湿因子は角質細胞内にあります。主な成分はフィラグリンが分解してできたアミノ酸で、水分を取り込んで保持する働きがあり、角層の水分量をキープする重要な役割をもっています。
角層細胞内にある脂質のことで、セラミドを中心とした脂質が水分を挟み込んで、何層にも重なっています。お肌の中の水分を抱え込み、うるおいを保持するうえで最も重要ともいえる保湿因子です。
この3つの保湿因子がバランスよく整っていれば、「お肌が潤っている状態」であり、バリア機能が高い状態といえるでしょう。しかし、紫外線や乾燥など、外部からのダメージを受けて肌が傷ついたり薄くなったりすると3つの保湿因子のバランスが崩れ、バリア機能が低下します。すると肌の水分を保つ力が弱まって乾燥肌になったり、肌荒れの原因となる様々なトラブルを招いてしまうことにつながるのです。
「バリア機能の低下」による主なトラブルが肌荒れです。「肌荒れ」とは、キメが整いうるおいと弾力のある「健康な肌」に対して、肌に何らかのトラブルがある状態。肌表面がカサカサ・ゴワゴワしたり、荒れた感じや赤み、ニキビや吹き出物、かゆみを伴う湿疹などができ、痒いからと掻いてさらにひどくして、ボロボロになってしまう人も。
このように、肌荒れの症状やお悩みは本当にさまざま。しかし肌荒れ症状の多くは、バリア機能の低下が原因のことが多いんです。つまり、どんな肌トラブルであっても、バリア機能を向上させることで、症状の改善を目指していくことが可能となります。
※バリア機能が低下する原因を知ることで、バリア機能低下による肌荒れを防げる場合も。バリア機能低下の原因を知りたい方は、以下の記事をチェック。
お肌が本来もっているバリア機能ですが、この機能を高めるにはどうすればいいでしょうか?一番大切なのは「保湿」です。肌のバリア機能をキープするためには、肌の水分と油分のバランスが重要。乾燥などにより水分が不足すると、バリア機能が低下して肌荒れの原因になるだけではなく、シワの原因の一つにもなるため、毎日の保湿ケアを丁寧に行いバリア機能を高めることを意識しましょう。
また、肌が生まれ変わるのは睡眠中ですからバランスの良い食生活を心がけ、しっかり睡眠時間を確保することも大事です。
肌を守ってくれるバリア機能ですが、いろいろな要因で水分量や皮脂量が減少することで、バリア機能も低下します。ただ、毎日のスキンケアでバリア機能を高めることは可能ですので、日々正しいお手入れを心がけて。
クレンジングはふき取るタイプのものは注意。ゴシゴシふき取ると肌への強い刺激になってしまうため、まずしっかりとメイクになじませてから、できるだけ擦らず優しくふき取るのがポイントです。しっかりお化粧する方は、落とす際もしっかり丁寧に時間をかけて落としてください。
洗顔の際は、泡立てるタイプの洗顔料であればたっぷり泡立ててから、手ではなく泡のクッションで洗うようにソフトな使い方をするのがベスト。泡立てネットを使うのもおすすめです。擦ることは刺激になります。レザーバッグやジュエリーなどをイメージしていただくとわかりますが、強い刺激を与えたら傷がつきますよね。肌も同じです。自分の大切な肌ですから丁寧にやさしく扱ってあげてください。
きちんと正しく洗浄した肌に、必要な水分と油分を補給することで、バリア機能を健やかに保つことができます。洗顔後はなるべくすぐに化粧水、そして乳液やクリームで水分・油分を補給することが大切。
肌の状態にもよりますが、脂性肌だからといって化粧水だけで終わらせるのは×。バリア機能を保つための油分が不足することにつながります。油分は水分を蓋のようにとじこめる役割を担っているので、乳液やクリームで保湿を忘れずに。できるだけ保湿・保水力のあるアイテムを選ぶようにすると◎。
紫外線対策は季節問わず1年中行うのがおすすめ。朝、洗顔したあとのスキンケアの最後に、日やけ止めをつけることを習慣にするのをおすすめします。敏感肌の場合は、肌への刺激が少ないよう、なるべくのびがよいタイプを選ぶのが◎。また、石けんやお湯でも落とせるタイプを選ぶなど、肌への負担が少ないものを選びましょう。
肌のバリア機能を高めるためには、スキンケアなどの外側からのケアだけではなく、バランスの良い食事、睡眠、運動などのインナーケアも重要。忙しくて食事から必要な栄養が摂れない時などは、サプリメントなどもうまく使いながら、生活習慣を整えて体内から改善を。
直接肌につけるスキンケアアイテムは、食べ物と一緒で肌を作り上げる基本となるもの。人工的なものや化学成分よりも植物由来のものなど、肌に優しい成分を見極めて選ぶのが安心です。この機会にぜひ今お使いのものを見直して、肌のバリア機能を高めてください。
(鈴木稚子 先生)
植物×発酵の力を掛け合わせて開発した、肌のうるおい貯水力を高める美容成分「酵母発酵エキスVEGAL[ベガル®]*」を贅沢に配合した「アルケミー」シリーズ。
化粧水や美容液はもちろん、メイク落としや洗顔料といった落とすケアアイテムにもVEGAL®*を高配合しているから、使うほどに肌荒れや毛穴トラブル※が起こりにくい肌へ導いてくれる、と話題です。
*整肌保湿成分 ※乾燥による
バリア機能を低下させる大きな要因、紫外線をカットするみずみずしくアクアリッチなデイクリーム。豊かな保湿力で、乾燥による過剰な皮脂分泌を抑えながら、日中の紫外線から肌を守ります。(SPF36/PA+++)
水分保持機能を持ち、外部刺激からのバリア機能をサポートする「セラミド」が配合されたナイトクリーム。化粧水と美容液で整えた肌にとろけるようになじみ、眠っている間に肌本来のすこやかな働きをサポートしてくれます。
1994年東京慈恵会医科大学医学部卒業。同大学皮膚科学教室国立大蔵病院皮膚科臨床研究部を経て、2000年用賀ヒルサイドクリニック院長。2017年六本木スキンクリニックを開院。美肌の予防医療を専門とし、現代女性たちの肌悩みを解消するアドバイス・指導などを行う。