1
川﨑 加織 先生
肌のバリア機能は水分の蒸発を防いでうるおいを保ち、ホコリや花粉などの外的刺激から守る大切な役割を担っています。乾燥や刺激を感じる時は、肌のバリア機能が低下しているサインかもしれません。肌のバリア機能の役割や機能が低下する原因の他、バリア機能を高めるポイントなどを紹介します。
目次
肌のバリア機能は、ホコリや花粉などの外的刺激から肌を守り、うるおいのある肌を保つために備わっています。まずは、バリア機能の役割と機能を構成する3つの要素について紹介します。
肌のバリア機能には乾燥を防ぐ働きと、大気中の汚染物質などの異物が侵入するのを防ぐ役割があります。
表皮の1番外側で外界と接している角層細胞内の天然保湿因子(NMF)と、角層細胞間を埋める細胞間脂質、そして角層表面の皮脂膜で肌のバリア機能は形成されていますが、乾燥した空気やかゆみにより肌をかいてしまうと破壊されます。
肌の表面を覆っている天然の保護膜で、皮脂の油と汗の水分が混ざりあってできています。
角質層の中にあるアミノ酸類や乳酸、クエン酸塩などの天然保湿因子の総称です。水溶性のうるおい成分ですが、スキンケアで与えられた水分を溜めこむ働きがあります。
角層細胞の間を埋めてつなぎとめ、角層内の水分が奪われるのを防ぐ働きのある油溶性のうるおい成分です。セラミドやコレステロール、脂肪酸といった脂質の総称で、およそ半分をセラミドが占めています。
以下の項目に複数当てはまる場合は、肌のバリア機能が低下しているかもしれません。
<肌のバリア機能チェックリスト>
原因にもよりますが、一度低下してしまった肌のバリア機能を回復させるには、数週間~数ヵ月の期間がかかると言われています。
また、ターンオーバーが乱れている場合は正常に戻す必要があります。
この後に紹介する、肌のバリア機能が低下する原因と回復させる方法を参考にしてみてください。
外的刺激から肌を守ってくれるバリア機能は、乾燥や紫外線、ターンオーバーの乱れなどで低下してしまいます。肌のバリア機能が低下する原因を詳しく見ていきましょう。
肌のバリア機能が低下する大きな原因として挙げられるのが乾燥です。冷・暖房の影響や外気の乾燥、間違ったスキンケアなどで肌が乾燥すると水分が蒸発しやすくなり、肌のバリア機能の低下につながります。乾燥によってバリア機能が低下すると外的刺激に敏感になるため、かゆみを感じやすくなります。
角質層は肌の1番外側にあるので、紫外線のダメージを直接受けやすい部分です。紫外線による日焼けは角質層の水分を蒸発させるため、乾燥の原因に。紫外線によって肌のバリア機能が低下すると、日焼けによる色素沈着だけではなく、肌荒れやニキビなどの肌トラブルを引き起こします。
肌を清潔に保つことは大切ですが、ゴシゴシ洗いや過剰な洗顔は肌に必要なうるおいまで落としてしまうため、バリア機能を低下させる原因になります。また、熱いお湯での洗顔や入浴は、肌のうるおい成分を奪い、乾燥の原因にもなるため注意が必要です。
正常な肌は、ターンオーバーによって新しい細胞と入れ替わりながらバリア機能を保っています。不規則な生活習慣やストレス、日焼けなどの影響でターンオーバーが乱れると、天然保湿因子(NMF)や細胞間脂質が生成されにくくなり、水分が外に逃げやすくなります。その結果、肌のバリア機能が低下してしまうのです。
その他、必要な栄養素の不足もターンオーバーの乱れを引き起こすことがあります。
年齢を重ねるにつれ、皮脂の分泌量や水分量、セラミドといった肌のバリア機能に必要なうるおい成分の量は減少していきます。女性ホルモンに含まれるプロゲステロンは肌のうるおいを助ける役割がありますが、これも年齢とともに減少しやすく、乾燥につながることも。うるおい成分が減少した状態が続くと肌のバリア機能が低下してしまうため、日常的なケアでうるおいを補給する必要があります。
肌のバリア機能がきちんと働く状態を保つには、スキンケアの方法やアイテム選びが大切です。肌のすこやかなバリア機能をサポートする方法を5つ紹介します。
曇りや雨の日でも紫外線は降り注いでいるため、日焼け止めなどによる紫外線対策は毎日欠かせません。紫外線対策として、朝のスキンケアの後には日焼け止めを塗るようにしましょう。肌への刺激が少ないタイプや、柔らかいテクスチャーでムラなく塗れるもの、石けんで簡単に落とせるものを選ぶと肌への負担を抑えられます。
クレンジングの成分やメイクを落とす時の摩擦でも、肌のバリア機能が低下する場合があります。クレンジング剤は肌への負担が少なくて、メイク汚れをしっかり落としながらうるおいを保ってくれるクリームタイプや、ジェルタイプがおすすめです。
クレンジング剤を使う前に、アイメイクや口紅などはポイントメイク専用のリムーバーで落としておきましょう。その後、適量のクレンジング剤をメイクとなじませ、ぬるま湯ですすいでください。
洗浄力が強い洗顔料の使用や力を入れた洗顔方法では、肌に必要なうるおいまで落としてしまいます。バリア機能の低下を防ぐため、洗顔料はしっかり泡立てて、きめの細かい泡をたっぷり使ってやさしく洗いましょう。洗顔料が肌に残らないように、髪の生え際までしっかりすすぐのがポイントです。
洗顔や入浴後の肌は、水分が蒸発しやすくなっています。肌のバリア機能を高めるためにも、スキンケアでしっかり保湿することが大切です。清潔な手に適量の化粧水をとり、両手でやさしく包み込むようにしっかりと肌になじませます。化粧水で補充した水分を閉じこめるように、乳液やクリームなどの油分でフタをして、水分が蒸発するのを防ぎましょう。
肌のバリア機能が低下している時は外部からの刺激に敏感になっているため、肌に合わない化粧品を使うとかゆみや肌荒れを起こすことがあります。敏感肌の人は「敏感肌用」などの表示がされているものや、低刺激でうるおい成分がたっぷり配合されているタイプを選びましょう。購入する時は、トライアルセットやサンプル、テスターなどで自分の肌に合うのか試してみるのもおすすめです。
肌のバリア機能を高めるには、肌を元気にしてくれる栄養素を毎日の食事で摂ることも大切。基本的には食べ物で摂るのが望ましいですが、難しい場合はサプリで補うのも一つの方法です。すこやかな肌へ整えてくれる栄養素を紹介します。
タンパク質は肌細胞の原料となる栄養素で、肌のターンオーバーを整えるのに大切な成分です。タンパク質が不足するとターンオーバーが正常に機能しません。また、肌のバリア機能に欠かせない天然保湿因子(NMF)もタンパク質でできています。魚や肉などのタンパク質は毎日の食事からしっかり摂るようにしましょう。
ビタミン類には、すこやかな肌に整えてくれる栄養素が豊富に含まれています。ビタミン類は体内に留めておくことができないため、毎日続けて摂るようにしましょう。色の濃い緑黄色野菜には、抗酸化作用がある栄養素も含まれています。
種類 | 特徴や期待できる効果 | 含まれる食材 |
ビタミンA | ・肌の粘膜にうるおいを与え、ターンオーバーを整える | ニンジン、カボチャ、小松菜、 鮭、ほうれん草など
|
ビタミンC | ・コラーゲンの生成や活性酸素を除去する ・体内では作られない栄養素
|
柑橘類、イチゴ、キウイ、 ブロッコリーなど
|
ビタミンE | ・血液の流れを良くして肌のターンオーバーを整える ・油を一緒に摂ることで吸収率が高まる
|
いくら、ナッツ類など |
肌のバリア機能を整えるセラミドや柔軟性を高めるスクワラン、ホホバ種子油を配合したナイトクリーム。酵母発酵エキス*を始めとする保湿成分が浸透※し、肌のバリア機能をサポート。湧きあがるような輝きをもたらします。
*整肌保湿成分 ※角層まで
肌のバリア機能は水分の蒸発を防ぐだけではなく、花粉やホコリなどの外敵刺激から守る働きもあるため、健康的で美しい肌を保つためには欠かせません。毎日のスキンケアで外側から、必要な栄養素を摂ることで内側からケアをして、肌のバリア機能を高めることが大切です。スキンケアや食生活を見直して、すこやかな肌を手に入れましょう。
皮フ科かわさきかおりクリニック院長。医学博士 日本皮膚科学会専門医 日本抗加齢医学会専門医。 「体の内外から美しくなれるクリニック」をコンセプトに一般皮膚科診療だけでなく、美容医療、頭髪治療なども行っている。またweb雑誌での連載やサプリメント・化粧品の監修などでも、多方面に活躍の場を広げている。