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監修者:あいち栄クリニック 寺田紗央里 先生
うっかり日差しを浴びてしまったけど、日焼け跡を残したくない・・・そんな時は日焼け後のケアを確実に行いましょう。日焼け後は肌を冷やしてほてりを鎮め、ターンオーバーがきちんと行われるすこやかな状態に戻すことが大切です。皮膚科医の寺田紗央里先生が、日焼け後すぐに行うべきケアと、日焼けが落ち着いた後のスペシャルケアを解説します。
目次
監修者:あいち栄クリニック 寺田紗央里 先生
紫外線により生成されるメラニンは通常、肌のターンオーバーとともに排出されます。しかし排出されずに肌の中に残ると、シミになる可能性があるのです。すこやかな肌状態に戻すため、日焼け後はなるべく早く手当てを始めましょう。ここでは、日焼け後すぐにするべきケアの流れを説明します。
日焼けした肌は軽いやけどと同じ状態なので、すぐに冷やす必要があります。そのまま放置すると、紫外線によるダメージがシミやしわ、たるみを引き起こすことも。冷やすのは早ければ早いほど良いので、日焼けに気づいたらすぐに冷やし始めましょう。
ヒリヒリする、真っ赤になるなどのわかりやすい症状はもちろんですが、日差しを浴びた部分が熱いのも炎症のサインです。もしひどく痛みがあったり、水ぶくれができるような場合はすぐに皮膚科を受診しましょう。
日焼け後は美白アイテムを使いたくなるかもしれませんが、まずは肌の炎症を治めることを優先します。冷やすことは日焼けケアで最も大切なステップなので、ヒリヒリ感やほてりがなくなるまでしっかり冷やすのがポイントです。
日焼けによるほてりが落ち着いたら、保湿ケアを行います。日焼けした肌は水分が失われ乾燥している状態です。また、水分が蒸発しやすくなっているため、しっかりと保湿する必要があります。化粧水で保湿をし、クリームなどで油分を補って潤いを保ちましょう。
また、日焼けした肌にとっては少しの摩擦でも刺激になります。肌をケアする時は、こすらないように優しくなじませましょう。
紫外線を浴びた皮膚の中では、メラニンという色素が生成されます。メラニンは肌のターンオーバーに伴って排出されるのが通常です。しかし、ターンオーバーが追いつかなくなると、メラニンが排出されずに皮膚の中にとどまることになり、シミの原因となります。
日焼け肌が落ち着いたらスペシャルケアで肌を整え、すこやかなターンオーバーを促しましょう。炎症が残っている状態では肌への刺激になることもあるので、スペシャルケアは肌が落ち着いてから行うことが大切です。
いつものケアに美白化粧品を取り入れる他、保湿に特化したシートマスクや、肌の状態をリセットするクレイパックなどもおすすめですよ。
うっかり日焼けしてしまった時は、適切なケアで肌へのダメージをできる限り抑えたいもの。ここでは、部位別のケア方法を紹介します。
顔の日焼けは、やわらかい布で包んだ氷や保冷剤で冷やします。こすると刺激になるため、肌を傷つけないようやさしく行いましょう。洗顔時も、肌に刺激を与えないように気を付けてください。洗顔料はしっかりと泡立て、表面をなでるイメージで時間をかけずに洗顔します。熱いお湯ではなく、ぬるま湯を使うのがおすすめです。
炎症が治まったら、化粧水や冷蔵庫で冷やしたコットンパックやシートマスクを使って、しっかり保湿をしましょう。
ボディの広範囲を冷やすなら、氷水にひたして絞ったタオルを使います。スプレーボトルに冷たい水を入れ、こまめに吹きかけて冷やすのも良いでしょう。また、首のうしろは特にうっかり日焼けしがちな部分。首の日焼けには、コットンやキッチンペーパーなどに、水と化粧水を半量ずつ混ぜたものを含ませて当てるのもおすすめです。ほてりが落ち着いたら、ボディも忘れずに保湿しましょう。
唇は皮膚が薄く乾燥しやすい部位です。紫外線の影響も受けやすいので、日焼け後はしっかりとケアしたいもの。唇も肌と同様、まずは冷やすのが大切です。氷を直接当てると刺激になるので、ガーゼなどで包んでやさしく押し当てます。
しっかり冷やした後は、リップクリームやワセリンで保湿しましょう。皮がむけてしまった場合は、リップクリームやワセリンを塗ってラップでパックするのもおすすめですよ。唇用の美容液もあるので、試してみるのも良いでしょう。
また、日頃からUVカット成分配合のリップクリームを使って唇の日焼けを予防することも大切です。
体の中で最も高い位置にある頭は、紫外線を浴びやすい部位です。肌が日焼けした時は、髪や頭皮も紫外線ダメージを受けています。髪や頭皮をいたわりながら、普段よりも優しくケアしましょう。
シャンプーの前にはブラッシングで髪の絡まりを取っておくのがおすすめです。シャンプーの時に、髪に余計な負担がかかるのを防げます。コンディショナーを塗布した後は、手ぐしを使ってしっかりと髪になじませます。
トリートメントやヘアパック中に蒸しタオルを使うのも良いですね。紫外線を浴びた髪は乾燥しがちなので、うるおいを補給してあげましょう。
また、外出時は帽子をかぶったり髪の分け目を変えたりしながら、頭皮も紫外線から守りましょう。
日焼け後のケアはもちろんのこと、まずは日焼け止めを使って肌を紫外線から守ることも大切です。ここでは、日焼け止めと日焼け後の肌をケアするスキンケア用品の選び方を紹介します。
日焼け止めを選ぶ際は、パッケージに記載されている“SPF”と“PA”の数値に着目しましょう。
SPFとは、紫外線B波(UVB)から肌を守る力を表したもの。紫外線B波(UVB)は、肌の表面が赤くなり、ヒリヒリとした痛みを感じる炎症「サンバーン」を引き起こします。SPFは数値が大きいほど紫外線B波(UVB)を防ぐ力が強く、その力が50より上のものはパッケージなどに「SPF50+」と記載されています。
もう一つのPAとは、紫外線A波(UVA)を防ぐ力を表した数値です。紫外線A波(UVA)は、肌が黒っぽくなる日焼け「サンタン」を誘発します。肌のたるみやシワの原因にもなるので、紫外線B波(UVB)と一緒にしっかり防ぎたいところ。PAは「+」が多いほど紫外線A波(UVA)を防ぐ力が強いことを表し、「PA++++」が最も防御力に優れています。
「サンバーン」や「サンタン」など、日焼けが引き起こす肌荒れの症状はこちらの記事で詳しく解説しています。
SPFとPAについて知ると、「どちらも強いものを選べば良いのでは?」と思われるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。SPFとPAは、数値が高ければ高いほど肌への刺激も強くなります。
敏感肌や乾燥肌など、肌がデリケートな人が数値の高い日焼け止めを使うと、肌トラブルが起こってしまうことも。そうならないように、日焼け止めは使うシチュエーションで選ぶことをおすすめします。
例えば、マリンスポーツやレジャーなど、強い日差しの下で長時間行動する時は「SPF50+、PA++++」と、UVカット効果が最も高い日焼け止めが適しています。屋外で少し運動をする時は「SPF30、PA+++」でも、紫外線から肌を守ることは可能です。
また、屋内で過ごす時やお買い物で少し外を歩く時など、普段の生活では「SPF10〜20、PA++」など、肌への刺激が強くない日焼け止めを選ぶと良いでしょう。
日焼け後、肌の炎症が治まったら、保湿効果のある化粧水やボディクリームを使ってしっかりと保湿しましょう。肌へ刺激を与えない優しいものや、保湿成分の含まれたものがおすすめです。
炎症が治まったら、普段のお手入れにスペシャルケアをプラスして素肌の環境を整えましょう。ここでは、肌に美容成分をたっぷりと届けるシートマスクと、肌の状態をクリアに戻すクレイパック、意外に見落としがちな唇のトリートメントを紹介します。
まずは、シートマスクとクレイパックの一般的な特徴を紹介します。
シートマスク
シートマスクは肌にぴったり密着させることで、美容成分を肌に届けるスぺシャルケアアイテムです。手軽に使えるので、時間がない時でも取り入れやすいでしょう。商品によって配合されている成分が違うので、目的に合ったものをチョイスするのがポイントです。使用頻度は商品によって異なります。
クレイパック
ミネラル豊富なクレイ(泥)を使った洗い流すタイプのパックで、肌のごわつきが気になる時におすすめです。スクラブに比べて細かな粒子のため、肌をこすらずに優しく角質ケアができます。商品によりますが、週1~3回を目安に取り入れたいケアです。普段の洗顔では取り切れない毛穴の汚れをクレイが吸着し、すっきりと洗い流します。
濃密な植物エッセンスを含んだ、コットン100%の肌にやさしいシートマスクです。美容成分を惜しみなく肌に届け、日焼けにより乱れてしまったターンオーバーを整えます。
ダマスクローズを始めとする天然の香りに包まれて、優雅なスキンケアタイムをどうぞ。
2種類の天然クレイ(泥)と、植物のエモリエント成分を配合したクレイパックです。やわらかいクリーム状で、日焼けによりごわついた肌をやさしくほぐします。
微粒子の天然クレイが毛穴に残った汚れまで吸着し、透明感のあるクリアな素肌に。ハーブのすっきりとした香りが心までほぐしてくれそうです。
ローズヒップ油などの質の良い植物オイルを配合した、唇の美容液です。なめらかなつけ心地で、唇をふっくらとみずみずしく整えます。口紅の下地として使えるのも嬉しいポイント。バニラとベルガモット、ミントをブレンドした甘くさわやかな香りです。
日焼けで黒くなった肌を白くしたい。そんな時は、肌の状態が落ち着いてから美白ケアを徹底しましょう。ここでは、日焼け後に行いたい美白ケアの方法を紹介します。
美白成分が含まれたスキンケアアイテムは、シミの原因となるメラニンの排出を手助けしてくれます。美白に有効的な成分は、ビタミンC誘導体やトラネキサム酸、アルブチン、レチノールなど。それぞれの働きは次の通りです。
ビタミンC誘導体 | メラニンの生成を抑える メラニン色素を薄くする
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トラネキサム酸、アルブチン | メラニンの生成を抑える |
レチノール | メラニン色素の排出を手助けする |
日焼け後は、これらの有効成分が含まれた化粧水などを使って美白ケアをしましょう。
有効成分が含まれた化粧水などを使って外側からケアするのと同時に、サプリメントや食事で内側からも美白ケアをしていきましょう。美白ケアをする時に積極的に摂取したいのは、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンEです。それぞれ、多く含まれている食材は次の通りです。
ビタミンA | ニンジン、ほうれん草、レバーなど |
ビタミンC | レモン、ピーマン(赤・黄・オレンジ)、ブロッコリーなど |
ビタミンE | アーモンド、うなぎ、西洋かぼちゃなど |
これらの栄養素、そして食材を取り入れるのが難しい場合は、サプリメントで摂取する方法もあります。
うっかり日焼けしてしまった時は、「シミになってしまうかも」と不安になるものですね。そんな時は適切なケアでターンオーバーを整え、メラニンが正常に排出される肌状態を目指しましょう。まずは日焼けした部分をしっかりと冷やし、十分な保湿を行ってください。肌が落ち着いた後はスペシャルケアを取り入れて、すこやかな肌を取り戻しましょう。
藤田医科大学を卒業後、名古屋大学付属病院、小牧市民病院の皮膚科医局員として勤務。 現在はあいち栄クリニックで皮膚科・美容皮膚科の担当医として勤務しています。