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監修者:公益社団法人 日本アロマ環境協会認定環境カオリスタ、アロマテラピー検定1級 藤巻慧子
花粉のシーズンは、目や鼻の不快感に悩まされている人も多いでしょう。植物から抽出された精油を使ったアロマテラピーには、鼻づまりや目のかゆみといった花粉症の症状を緩和する効果が期待できます。この記事では花粉症対策にアロマが効果的な理由と、症状別におすすめの精油、手作りアロマスプレーの作り方などを紹介します。
目次
監修者:公益社団法人 日本アロマ環境協会認定環境カオリスタ、アロマテラピー検定1級 藤巻慧子
アロマテラピーとは、植物から抽出した精油(エッセンシャルオイル)を使って、美容と心身の健康に役立てる自然療法です。精油にはさまざまな効果が期待できますが、なかには花粉症による不快な症状を緩和してくれる働きを持つものもあります。まずはアロマテラピーのメカニズムを解説し、なぜアロマが花粉症対策に効果的なのかを詳しく紹介します。
精油は、嗅覚器または皮膚・呼吸器を通じて心身に作用します。
<嗅覚器>
香りを嗅ぐと、精油成分は呼吸器官を通して吸収された後、身体の組織や器官をめぐって代謝されます。代謝とは、体外から体内に入ったものを必要な物質に変換していくこと。最終的には肝臓で代謝されて、体外へと排出されます。この場合、血液循環はしません。
なお、嗅覚は五感の中で唯一、脳にダイレクトに届くため、植物の芳香成分が直接働きかけてくれます。嗅覚にキャッチされた香りの分子は、感情や本能をつかさどる「大脳辺縁系」に伝達され、さらに分子の情報は自律神経をつかさどる「視床下部」へと伝わります。アロマテラピーは自律神経に香りを伝えることで、体温や睡眠、ホルモンの分泌、免疫機能などのバランスを整えます。
<皮膚>
精油を塗布した場合は皮膚内に浸透し、保湿や肌の引き締めなどに作用します。この場合も血液循環はしません。
<呼吸器>
口から入った場合は、口の中・喉・食道・胃・小腸といった消化器官の粘膜から血液に入り、血液の循環によって全身に伝わります。口からの経路は精油が体内へ大量に入る可能性が高く、肝臓や腎臓に害がある場合もあるので、精油の飲食は推奨できません。
アロマテラピーは鼻づまりやくしゃみ、鼻水といった鼻炎の症状緩和にも効果が期待できます。これを証明したのが、公益社団法人 日本アロマ環境協会(以下、AEAJ)が行った実験※です。
実験は、通年性アレルギー性鼻炎の男女に対して、サンダルウッド、フランキンセンス、ラヴィンサラをブレンドした精油を1日2回、7日間続けて吸引する方法で行われています。
その結果、鼻炎症状の全般、特に鼻づまりについて症状が緩和したと答えた人が多数見られ、精油の吸入が通年性アレルギー性鼻炎症状を緩和する可能性が明らかになりました。
※参照:AEAJ「アロマテラピーが通年性アレルギー性鼻炎に与える影響」
精油の中には、花粉症改善に効果的な作用を持つものもあります。例えば、消炎効果のある精油なら鼻の粘膜の炎症を抑え、鼻水や鼻づまりの症状緩和に期待できます。
その他、免疫機能に作用する精油には、アレルギーを抑える効果が期待できます。また、リフレッシュ効果のある精油は、花粉症の症状による不快感を改善し、気分をすっきりとさせてくれるでしょう。
植物から抽出される精油にはさまざまな種類があり、それぞれ期待できる効果が異なります。花粉症対策におすすめの精油と、効果的な使い方を気になる症状別に紹介します。
ユーカリ・ラディアータは、ユーカリの香りの中でも、独特の「ツン」とした刺激が少ない優しい香りが特徴です。喉や鼻の炎症を鎮める作用や痰を切る作用、免疫力を高める作用、空気の消臭・清浄作用などがあるため、花粉症やインフルエンザなどのウイルスやアレルギーに対して効果が期待できます。
また集中力を高め、ストレスや緊張を鎮める作用もあるので、ストレスによる体の不調を緩和してくれるでしょう。
<おすすめの使い方>
アロマテラピーに用いられることの多いペパーミント精油は、フレッシュで爽やかな香りが特徴です。火照った体をクールダウンして爽快感をもたらす作用があり、高熱や喉の腫れなど呼吸器系の不調に効果が期待できます。また、鼻づまりや眠気のある時にもおすすめです。
<おすすめの使い方>
ラベンダー精油は、柔らかでやや甘めなハーブとフローラルの香りが特徴です。炎症を抑える作用の他、抗菌、除菌、抗ウイルス作用、頭痛やイライラを和らげるリラックス効果もあると言われています。
<おすすめの使い方>
清涼感のあるシャープな香りが特徴のティートリー。強力な抗感染作用と殺菌消毒作用があり、免疫力を高めて感染症の再発を予防してくれると言われています。粘膜の炎症を抑え、花粉症の症状を軽減する効果が期待できます。
<おすすめの使い方>
ローマンカモミール精油は、りんごのような甘くフルーティーな香りが特徴です。炎症を鎮めて痛みを和らげる他、目のかゆみにも効果があると言われています。緊張やイライラを和らげてくれるため、安眠効果も期待できます。
<おすすめの使い方>
樹脂系の甘い香りのフランキンセンス精油は、粘膜の炎症を和らげる作用や、免疫力をアップさせてアレルギーを抑える効果があると言われています。保湿効果もあるため、鼻のかみすぎによる肌荒れ改善も期待できます。
<おすすめの使い方>
つらい花粉症の季節には、アロマを使った花粉症対策がおすすめです。香りを楽しみながら不快な症状を緩和してくれる上、手軽にできるものばかりなのでぜひ試してみてください。
外出先での鼻づまり対策におすすめなのが、精油をマスクやハンカチにたらして吸引する方法です。マスクを使用する際は、肌に触れないように精油を端にたらすのがポイント。ティッシュにたらしたものをマスクの内側に入れる方法もあります。
ハンカチを使用する際も肌に直接触れないように、精油を染み込ませてください。ただし、色のある精油はシミになる可能性があるので、必ず確認してから使用してくださいね。
鼻がムズムズする時には、手軽にできる芳香浴もおすすめです。やり方は、マグカップにお湯を入れて、好きな精油を1~2滴たらすだけです。湯気と香りを吸い込むと鼻がすっきりします。湯気に顔を近づける時は、目を閉じるようにしてください。目安時間は5~10分ほどです。
小さなボトルでアロマスプレーを作っておくと、いつでもシュッとひと吹きで気分をリフレッシュできます。精油のまま使うよりもスプレーの方が香りを柔らかく感じられる上、携帯しやすいので便利です。
アロマスプレーは空間に使うのも良いですが、枕やマスクに吹きかける方法も。マスクの外側にスプレーしておくと花粉症対策になるだけではなく、気になるニオイも解消してくれます。
花粉対策をしながら精油の香りで部屋を包み込みたい時は、ディフューザーの使用がおすすめです。ディフューザーには気化式、噴霧式、加熱式、超音波式など複数の種類があります。使い方は製品によって異なるため、使用時は説明書に従ってください。
電気を使いたくない場合には、木製のリードスティックを使うリードディフューザーを使ってみるのも良いでしょう。おしゃれな見た目のものが多いので、インテリアにもなります。
持ち運びに便利で、好きな時にシュッとひと吹きできるアロマスプレー。市販品でも、もちろん構いませんが、簡単に手作りすることもできます。ここでは、手作りアロマスプレーの材料と作り方を紹介します。
なお、花粉症対策としてアロマスプレーを作る場合は、前に紹介したユーカリ・ラディアータ、ペパーミント、ラベンダー、ティートリー、ローマンカモミール、フランキンセンスの精油を使用するのがおすすめです。
ただし、香りの好みは人によって異なるため、自分の好みに合わせて精油をブレンドしたり、好きな香りを追加したりして楽しんでみてくださいね。
20mLのアロマスプレーを作れる材料を紹介します。
【材料】
【必要なもの】
【あると便利なもの】
【作り方】
スプレー容器に精油や無水エタノール、精製水を直接入れて振り混ぜても良いですが、ビーカーを使った方が混ぜムラを防げます。精油と精製水はそのままでは混ざらないため、必ず無水エタノールに溶かしてから混ぜましょう。
また、使用した精油や作った日がわかるようにラベルを貼っておくと便利です。
アロマテラピーは基本的に誰でも手軽に行えます。しかし誤った方法で行うと、思わぬトラブルにつながるので注意が必要です。
精油には皮膚刺激、粘膜刺激、皮膚感作、経口毒性、経皮毒性があります。そのため、そのまま肌に付けたり、飲んだりしてはいけません。もし肌に使用したい場合には、1%以下に希釈して使用するのが基本です。使う精油の種類や使用方法によっては、0.5%以下にする必要があります。
また、体質や体調によっては肌が荒れてしまったり、まれにアレルギーを起こしたりすることもあるため、特に敏感肌の人は注意が必要です。もし肌に付けて赤みや発疹などの異常がみられたら、速やかに医師の診察を受けてください。
なお、希釈したものであっても、精油を飲むことは絶対にやめましょう。また、精油がついた手で目をこすらないように気をつけてください。
精油には揮発性や引火性があります。キッチンなど、火気のある場所でアロマテラピーを行う場合は、特に注意が必要です。
精油の中には、通経作用や子宮収縮作用、堕胎作用、ホルモン様作用、エストロゲン様作用を持つものがあります。それらの精油は妊娠中の使用を避けましょう。
<妊娠中に避けるべき主な精油>
上記以外にも妊娠中の使用に注意が必要なものもありますが、妊娠時に避けたい作用を持たない精油で芳香浴をする分には問題ありません。理由は、芳香浴は体内へ吸収される精油成分が微量なためです。ただし、マッサージや入浴に使用すると経皮吸収になるので避けてください。
また、子どもは大人より嗅覚が繊細で、外からの影響を受けやすいため、使用には注意が必要です。特に、3歳未満は使用しない方が良いでしょう。
誤飲を防ぐため、精油は子どもやペットの手の届かないところへ保管してください。もし精油を口に含んでしまったら、すぐに大量の水で口をすすぎます。万が一、子どもが精油を飲み込んでしまった場合は、吐かせずに医師の診察を受けましょう。その際は、飲んでしまった精油の名前と飲んだ量を医師に伝えてください。
日常生活にアロマテラピーを取り入れれば、花粉症対策をしながら気分もすっきりリフレッシュできるはず。つらい症状を和らげて快適な生活を送るために、植物の力を活用しましょう。好きな香りは体だけではなく、心にも良い作用をもたらすので、ぜひ毎日の生活に取り入れてみてください。
花粉症の症状が気になる時には、肌も乾燥・敏感気味に。アロマでのケアに加えて、スキンケアを見直してみることもおすすめします。今回は、Her ELEGANCE編集部が花粉症の影響で肌荒れが気になる時におすすめしたい、メゾンレクシアのアイテムを紹介します。
毛穴の詰まりやくすみ※、ごわつきをすっきり落としてくれるクレイパック。不要な角質とともに、肌に付着した花粉もリセットしてくれます。硬くなった肌をほぐして、生まれたてのようなワントーン明るいクリアな素肌へ。ラベンダーの香りが肌も心も落ち着かせてくれます。
※乾燥による
オレイン酸やリノール酸が豊富なヒマワリ種子油に、栄養価の高い植物を約500時間つけこんだ、独自のインフューズドオイルを贅沢配合したオイルです。乾燥・ごわつき・くすみ※1が気になる肌や、化粧水の浸透※2が悪い時におすすめ。さらっとした軽いテクスチャーで使いやすいのも魅力です。
※1 乾燥による ※2 角層まで
WEBメディアディレクター。コンテンツSEOに特化したライターの育成も行う。自分自身の心身の健康のため、精油を学ぶ。心地よさを重視した、感覚ファーストな香り選びが得意。好きな精油TOP3はネロリ、コリアンダー、イランイラン。